下村彰慶 オステオパシー人生のブログ|日本オステオパシープロフェッショナル協会

巨星堕つ・・・

2022年4月19日

 

4月1日、アメリカの偉大なオステオパシードクターであったアンソニー・チラD.O.,F.A.A.O,が他界された。

 

私とチラD.O.との繋がりは結構古く、ハッキリとは覚えていないが、約20年位の付き合いがあったのではないかと思う。

 

毎年AAOでお会いし、ランチをご一緒させて頂くのがとても楽しみだった。ワインがとても好きなドクターであったが、チラ先生の体調はずっと気になっていたのでコロナでアメリカに行くことが出来ていないここ2年間は、2~3回メールにて様子を伺っており「体調は良い・・・」との返事を受けて安心してはいたのだが・・・。

 

生前チラ先生には本当によく可愛いがっていただいた。ご自宅に夕食の招待をいただいたこともあるし、オハイオ大学で教鞭をとっておられる時には、3回程フルで授業にも参加させて頂き、アンソニー・チラワールドを見せてもらい、色々なことを教えて頂いた。

 

唯一フルで見たことがなかった部分が頭蓋であったが、数年前チラ先生に何度も断られながらもお願いを繰り返し、日本人で初めてチラ先生の頭蓋セミナーに私以外に前田悦宏・東山裕紀・伊藤聖の3名を引き連れて、バージニア大学で開催された「クラニアルセミナー」に参加させて頂いたのが最後に教えて頂いた内容となってしまった。

 

チラ先生の「クラニアルセミナー」はAOA認定セミナーであるため、参加資格としてまずアメリカのオステオパシー大学を卒業したD.O.でなければならない。それに加えて“マニピュレーションを実践している者“という条件が付けられていた。通常MDであれば参加できる場合が多いのだが、チラ先生の「クラニアルセミナー」はMDもダメで、アメリカのオステオパシー大学卒業生でかつ実践者・・・という参加条件だったのだ。

 

本来であれば、当然我々は参加資格に当てはまらず、参加することは出来ない・・・。断られて当然であった。そこを何度も何度もお願いしたものだからある日突然、チラD.O.から全くメールの返信がこなくなってしまった。この時はさすがに焦った・・・。

 

後日わかったのだが、私からの度重なるお願いに根負けされたチラD.O.はこの間に私達が参加出来るようにバージニア大学の学長や、AOAの関係者及びテーブルトレーナーの方々に根回しをして下さっていたのだ。

 

時間と教育には最後までとても厳しい先生であったが、その奥に秘めた心根は心からオステオパシーを愛するドクターであり、心優しい真の教育者であった。

 

もし、私が約20年前にアンソニー・チラD.O.と知り合えていなかったなら今の私は無かった。チラ先生と知り合えたことは私のオステオパシー技術を一変させただけでなく、オステオパシー人生も変えさせられた。

 

例えば現在私が得意としている「三角技法」などは元々チラD.O.から教えてもらったものを応用し、適応範囲を拡張させているだけである。

 

 

また今思い起こせば、チラ先生から言われた言葉がJTOC(学校)を始めたきっかけの一つになっていたような気もする。その言葉は完全ではないかもしれないが以下の内容であった。

 

「アキ(下村)は自分の出来る範囲で日本人に合ったオステオパシー教育(この時の意味は学校教育だったと思う)をしなさい。」その一つとして「次回私が来るまでにもっと膜について教育しておきなさい」だったのだ。

 

この事がきっかけとなり、私は日本全国のPT・OT・柔整師・鍼灸師にDMを発送し、「膜の概念」セミナーを始めたのだった。

 

そしてチラ先生の方から私に対して言明してくださった事が一つあり、現在においても大変光栄な事であり、感謝し続けている。

 

それは「私が日本で教える時はJOPA以外のメンバーには教えない」という言葉で、実際、終生私に言明された言葉を守り通してくださった。

 

今ではチラ先生を日本にお招きしてセミナーを開催したときにセミナー受講生に対して「今世紀最後のオステオパシー界のモンスターである!」と紹介したことが懐かしい。

 

チラ先生の技術は本当に素晴らしかった。その中でも特に私が印象に残っているのが膝関節と頭蓋だ。

 

膝関節のインダイレクトは本当に早く、私も何回もチャレンジしたがあの様なスピードでは出来ない。

 

頭蓋はヨーロッパのオステオパスも含めて一般のオステオパスが想像するであろう内容とは全く違い、身体に波及する効果も全く別格である。

 

まさに「モンスター」という言葉しか思いつかない。

 

他界されてから今回ブログに書くまでに時間を置いたのは、私の心の中に大きな空洞が出来、気持ちを落ち着かせるのにしばらくの時間を必要としたためだ。報告を受けた日の夜は、しばらく涙が止まらなかった・・・。

 

セミナーの時にチラ先生が近付いて来たら私の手が緊張で硬直していたのを今では懐かしくも思える・・・。

 

もし出来るならチラ先生からもう一度、お叱りの言葉も聞きたいし、手が緊張で硬直することも体験してみたい。

 

でもそれすら叶わない今となっては、ただこれまでお世話になったオステオパシー界の巨星・アンソニー・チラD.O.,F.A.A.O.,が安らかに永眠されることを心より願うばかりである。

 

合掌。