日本人として初の
名誉ある仕事
昨年10月、米国オステオパシー学生学会(SAAO:Student American Academy of Osteopathy)から講演依頼があった。一度はノミネートされながら最終選考で落選していたが、今回日本人として初の名誉ある仕事を引き受けることになったのである。
テーマは「オステオパスのための鍼治療」
テーマは「オステオパスのための鍼治療」に決定した。理由は、関節や内臓などはもはや先人のオステオパスがやっているし、わざわざ日本人から技術を学ぼうとする者はいないと考え、アジアが本家となるようなものでかつオステオパシーの哲学にも通じるものにしようと考えたからだ。これなら、鍼やエネルギーというものに興味を持っているアメリカの学生にも、アジアから来た日本人の講義に聞く耳を持ってもらえるであろう。「オステオパスの鍼治療」は、私が7~8年前に開発した診断と治療を併せ持つ技術で、身体内を流れるエネルギーを感じ取り、一番ブロックされているところに一本だけ鍼を打つか、あるいはマニピュレーションを加えるという方法である。
日本のオステオパシーを売り込む絶好の機会!
講義は1回200人でそれを2回お願いしたいということであった。1回90分の持ち時間で、通訳を介するので私が喋る時間は実技も含めて40分にしないといけない。その時間で200人を満足させることは可能だろうか? 絶対に成功すると確信があった訳ではないが、返事はすぐにしなければならず、直感でうまくいくと思い引き受けた。まともに考えると引き受けるのはアホであるが引き受けてしまった以上、何とかしようと考えるのがいつもの私のやり方である。 学生のほとんどは鍼を持ったことさえない。何をすれば満足に導けるのかを私なりに考え、それを基にプレゼンの資料を作成し、JOPA講師陣との練習日に、40分でどこまでできるかをテストし、意見も聞いて修正した。これで、プレゼンはほぼ良いだろう。 しかし、対象人数が200人となると、最低でも5~6人のトレーナーが必要だ。日本から連れて行く経費は出ないので現地で頼まなければならない。アメリカの友人が奔走してくれ、最終的には日本人を含むDO7人が協力してくれることとなった。しかしこのDOたちにも鍼の知識がないので、この技術について一から教えなければならない。 |
こんなに苦労してまでも今回の講師を引き受けた理由は、「オステオパシー後進国」と思われているであろう日本が、世界のトップに肩を並べようとするなら、無理を打開するパワーを持ち、リスクもとらないとダメだと思っているからである。とにかく「私」より「日本」を売り込みたかった。講師を務めるということは「日本のオステオパシーはすごいぞ!」と思ってもらえる絶好の機会であり、登竜門なのだ。
トレーナーのDOたちへの指導は、症状を持っていた3人に対してのガチンコの治療を通して行った。左肩の拳上痛、右手根管症候群と腰痛、そして物が二重に見える症状の3例である。顕著な治療効果をその場で理解してもらい、信用を得ることができた。その後鍼の打ち方やエネルギーの診方を伝えて練習し、皆で食事に行った。後は本番の3月13日を待つばかりだ。
患者の痛み消失。好評に心から感謝!
当日の通訳は鈴木泰正DOが引き受けてくれた。日本と全く同じように受講生を引き付けるために講義の冒頭にデモンストレーションを行った。 交通事故を起こし、何回もオステオパシーの治療を受け、改善しているが左側の腰痛と左肩甲骨の痛みがなかなか取れず、肩も動かすと痛いという人がモデルになってくれた。右手環指中手骨と手根骨の間に上行性エネルギーのブロックがあり、そこだけを鍼を使わずにマニピュレーションでエネルギーを通すと10分後には左肩の痛みは消失した。腰痛はまだ少し残ったが、講演終了時に通訳者が確認すると、腰痛も消失し、動かしても痛みはなかった。受講生も大変驚き、喜んで練習をしてくれ、予定通りに無事終了! |
2回目の講義は大ホールを埋め尽くすほどの受講生が入ってくれた。モデル患者の症状は、右頚部と左腰部の痛みだった。エネルギーの流れを見ると、右扁桃体に完全なブロックがある。この程度のブロックなら鍼を使う必要もないので、やはりマニピュレーションを3~4分行った。終了時には腰痛も頚部痛も消失していた。
講義終了後、「どうしたらこの技術を教えてもらえるのか」といった質問を数多くされ、会場から出ると多くの受講生の方々から「すごく良かったよ!」と声をかけてもらった。トレーナーのDOからも褒めてもらいとても嬉しかった。心より感謝である。